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2023年12月の記事一覧

【探究の熊西】高大連携②群馬大学『二酸化炭素の還元』

 理数科2年生は年間を通して、課題研究を行っています。その中には大学と連携して課題研究を進めていく場合もあり、その一部を紹介させていただきます。

 

 地球温暖化から地球沸騰化へ!!最近は気候変動により魚の分布など様々な場面にその影響が見られるようになりました。そこで理数科二年生のなかには『二酸化炭素の還元』を研究テーマに掲げるグループがあります。

 二酸化炭素ガスを炭酸水素ナトリウム水溶液に通して、電気化学的に還元することを目指しています。様々な研究論文を読み、ネルンストの式から還元物質を予測したり、電気分解後の水溶液に臭素水を添加して色が薄くなることから12ジブロモエチレンの存在を予想しました。

 群馬大学へ進学した理数科卒業生の助けもあり、群馬大学 林史夫准教授に分析方法について相談し、この機会に生徒から自分達の課題研究について林先生にプレゼンを行い、助言をいただきました。

 林先生の説明は理路整然としており、非常にわかりやすく、生徒は集中して話しを聞き、一生懸命に自分達の疑問をぶつけていました。相談後は、群馬大学の機器分析センターをめぐり、分析機器の仕組みや応用範囲を丁寧に説明していただきました。

 本校卒業生も後輩に優しく説明してくれました。3時間半という長さでしたが、林先生には最後まで丁寧にご説明いただきまして、大変ありがとうございました。生徒達は刺激を受け、実験へのモチベーションも上がりました。高大連携を通して研究テーマを深めると共に、大学を知り、自分の将来を考える良い機会となりました。本当にありがとうございました。

【探究の熊西】放射線セミナー

理数科1年生に放射線セミナーを実施しました。東京大学工学系 特任専門員 飯塚裕幸先生に講義、実習指導をいただきました。先生には毎年理数科生徒へご指導いただきまして、ありがとうございます。また、日本原子力文化財団 参事 近野俊治氏に実習補助を行っていただきました。ありがとうございます。

 

講義:「放射線の基礎知識」放射線の基礎的知識・取り扱いに関する講義

 

実習は、霧箱による放射線の観察、自然放射線(バックグラウンド)の測定、距離の逆二乗則、ガンマ線の物質による吸収、自然放射線の測定を行いました。

 今回は放射線の正確な知識を得るとともに、放射線を見える化し、目に見えない現象を定量的に理解する学習プログラムでした。基礎知識に関する講義と実習から構成し,データを客観的に測定・比較し,検討する体験となりました。生徒達は最初から最後まで一生懸命取り組んでくれました。今後の課題研究に活かしていきましょう。

 

【探究の熊西】高大連携①日本薬科大『キハダから自然農薬』

 理数科2年生は年間を通して、課題研究を行っています。その中には大学と連携して課題研究を進めていく場合もあり、その一部を紹介させていただきます。

 

 まずは秩父地方における植生の観察を行い、消炎鎮痛剤として用いられるサリチル酸メチルを含むミズメ、芳香を発するアブラヤシ、薬木の代表としてキハダの観察を、NPO法人秩父百年の森の理事である島崎武重郎氏から体験を通してご説明いただきました。植生観察を通して自然を理解すると共に、地域の課題についても議論しました。

  課題研究では『キハダから自然農薬』を研究テーマに掲げ、まずはキハダという植物(漢方におけるオウバク)からその有効成分であるベルベリンなどを取り出していきます。大学の研究室にて、カラムクロマトグラフィーを用いて有効成分を少しずつ分離しました。夏休みに生徒が何度もお邪魔して、実験させてもらいました。ありがとうございます。SSHによって本校でも同様の抽出実験ができるようになります。年始から生徒と組み立てていく予定です。

 そして、有効成分が単離できているか、NMRの測定結果から考察を行いました。さらにこれらの有効成分が大腸菌へ増殖抑制作用を示すこと、防虫作用をどの程度示すか、まだまだ研究は続いていきます!

 

【探究の熊西】企業連携:電子顕微鏡観察②(日立ハイテク)

今年度も株式会社日立ハイテク様から電子顕微鏡をお借りしました。

 地域における科学教育の振興を目的とした理科教育支援活動として、株式会社日立ハイテク様より日立卓上顕微鏡TM4000PlusⅡをお借りしています。大変ありがとうございます。 

 電子顕微鏡とはどんなものでしょうか?

 世の中で最も小さい電子を対象にぶつけて、その形状を見ていきます。そのため、光学顕微鏡よりも小さいもの、ミクロの世界をのぞくことが出来ます。ただし、電子をぶつけるため真空が必要であり、観察する対象は金属など導電性があるほうが有利です。

 しかし、日立卓上顕微鏡TM4000PlusⅡは真空度を制御して、導電性のない対象も観察できます。さらに、電子を対象にぶつけてその跳ね返りを見ているので、観察対象の材質の違いを見ることも出来ます。

 授業SS化学・自然科学部の中で、生徒と電子顕微鏡観察について話しあい、観察しました。

今回はその第2弾です!!

①カレンダーを触ったときに、触ったときの感触が異なるのはなぜだろう?

 紙の種類がちがうと思われるカレンダーを比較してみました。

 <上質紙と思われるカレンダー 600倍>

 <コート紙と思われるカレンダー 600倍>

 コート紙と思われるカレンダーは表面の凸凹が少なく、まさしくコーティングが形成されているのに対し、上質紙と思われるカレンダーは大きさや太さが異なる繊維が複雑に絡みつき、表面が凸凹していた。コート紙は紙表面にレジンコートやインク受容層があり、非常に平らになっていることがわかりました。

 

②主に拭き掃除に用いられるマイクロファイバータオル。普通の布と比べて汚れがよく落ちることから、繊維の構造にどのような違いがあるのか気になり、比較を行った。

 <マイクロファイバー 400倍>

 <綿タオル 400倍>

 マイクロファイバータオルは繊維が細く、太さが均一であるが、綿生地のタオルは繊維の太さも形状もばらばらでした。マイクロファイバータオルと綿生地のタオルで繊維の形状が異なるのは、前者はポリエステルやナイロンからなる合成繊維で、後者は綿花からなるは天然繊維であるからだと考えられます。また汚れの落ちやすさが異なるのは、マイクロファイバータオルの高分子自体が汚れを除去・吸着しやすいように設計、合成されているからです。残念ながら、写真では高分子の構造までは見ることができません。

 

③市販のマスクのフィルターの1枚目、2枚目、3枚目を切り取り比較した。

 

  1・3枚目よりも2枚目の不織布が非常に細かく、密度よくつまっていて、ここで飛沫などの侵入を防いでいると考えられます。1・3枚目は肉眼では見えないけれど、強度を保つために四角いシールがついていることがわかりました。

 

  電子顕微鏡を用いて観察を行いました。肉眼ではよくわからなくても、電子顕微鏡が本来の姿を正確に教えてくれます。やはり正確な観察が大切だと改めて気付かせてもらいました。

 

 

 

 

【探究の熊西】「科学技術と社会」in 日本科学未来館

 12月14日理数科1年8組39名は、日本科学未来館において「科学技術と社会」について講義・実習を行ってきました。

 科学技術は、社会の抱える問題を解決し、生活を便利にしてきた一方で、新しい科学技術を使うことによって、思わぬ形で新たな問題も生み出してきました。科学技術を使って、望ましい未来を実現させるためには、同時に起こりうる危険やリスクについても予測して、対処の方法も考えておくことが重要です。科学技術に対する選択は、一部の専門家にまかせるのではなく、あらゆる市民が参加する中で社会として決めていく必要があります。

 今回の講義・実習を通して、2年生からはじまる課題研究に向けて科学技術との向き合い方を学びながら、『問題点を見つけ、具体的な疑問を作り、仮説を立てる』機会としました。

 

講師の先生は本校から長期研修で日本科学未来館で研修を行っている竹内公彦先生です。先生のお話は理路整然としており、何度も「なるほど」と感じました。 

 <講師の竹内先生のお話は説得力がありました>

午前は日本科学未来館の展示について班ごとに調査を行い、その科学技術におけるメリット・デメリットを話し合いました。

 午後はメリット・デメリットで出てきた視点ごとにグルーピングを行います。そして、現実と理想のずれから疑問を見つけ、共通点を探し出し、これらを解決するための課題を設定します。

日本科学未来館の展示物の前で、来場者の方へ説明を行いました。

最後の発表では、各班の考えがよく整理されており、彼らの能力の高さ、頑張りがよく伝わってきました。これから課題研究がはじまります。今回の経験を活かして、充実した課題研究と一歩を踏み出せることを願っています。

 

【探究の熊西】理数科1年生ユニット型課題研究(化学分野)『発光の化学』

10月27日から11月27日にかけて、理数科1年生を対象にユニット型課題研究の化学分野を行いました。

 生徒には実験を全力で楽しんでほしい。しかし、大半の生徒は自ら実験を行ったことがありません。そこで生徒が主体的に実験に取り組めるよう、実験の目標に対して仮説を立てること、その仮説を具体的な実験条件に反映する力を身につけることを目的として、化学分野の実験をはじめました。

 化学分野では「発光の化学」と題して、様々な発光現象に触れつつ、硫化亜鉛に添加された金属イオンからの発光現象について取り組みました。

①10月27日 講義

 炎色反応や化学発光、フォトルミネッセンスについて取り上げ、発光についての基本的な講義を行いました。

②10月31日 基本実験

 実際に酸化還元反応を用いて硫化亜鉛を合成し、各班ごとに異なる金属イオンを取り込みました。合成した硫化亜鉛は白色の結晶ですが、紫外線を当てると発光します。取り込んだ金属によって色が変化します。

 

③11月1~10日 班ごとに実験条件の検討会

 発光現象を改善するために、発光の仕組みや反応のどこに問題があるのか仮説を立て、改善するための実験条件を考えます。みんな朝学習や休み時間、放課後を使って、熱心に議論を繰り返していました。

 ④11月20日 改善実験

 各班が自分たちの仮説に基づいて、実験条件を変更しました。生徒は一生懸命実験に向き合っています。

 

  仮説通りにできたかな?

⑤11月27・28日 発表会

 仮説を立て、実験条件を変更し、どんな結果になるか想像しながら、改善実験に至る過程を重視して、発表会を行いました。各班4分+質疑4分の発表となります。

 

 

 発表資料は、グーグルスライドで作りました。互いの意見に耳を傾けながら、考えが少しづつ形となっていきました。発表についても、各班が工夫を凝らし、相手に伝えようとする意思が伝わってきました。

 「発光」は非常に難しい分野であり、高校生のレベルを大きく超える内容です。それにもかかわらず、理数科1年生は自主的に学習し、自分で必要と思われる知識を積極的に吸収していました。彼らの成長が感じられる活動となりました。

【探究の熊西】物理基礎 音速の測定実験

2年生の物理基礎では、「音」の学習をしています。

期末考査が近づくよく晴れた日、教室の外に出て音速の測定実験を行いました。

スマートフォンのアプリを用いて、2つのイベント間(実験では、1人の生徒が手拍手をしてから、向かい合った生徒が手拍手をするまで)の時間差を計測し、その結果をもとに音速を測定しました。

空気中の音速は気温によっても変わりますが、およそ340m/s。

向かい合う2人の距離が離れるほど計測が難しくなる実験でしたが、各班上手に工夫しながら測定をしていました。

実験では誤差5%以内の精度で求められた班が多くあり、音の伝わる速さを実感することができました。

 

【探究の熊西】企業連携:電子顕微鏡観察(日立ハイテク)

今年度も株式会社日立ハイテク様から電子顕微鏡をお借りしました。

 地域における科学教育の振興を目的とした理科教育支援活動として、株式会社日立ハイテク様より日立卓上顕微鏡TM4000PlusⅡをお借りしています。大変ありがとうございます。

 

 電子顕微鏡とはどんなものでしょうか?

 世の中で最も小さい電子を対象にぶつけて、その形状を見ていきます。そのため、光学顕微鏡よりも小さいもの、ミクロの世界をのぞくことが出来ます。ただし、電子をぶつけるため真空が必要であり、観察する対象は金属など導電性があるほうが有利です。

 しかし、日立卓上顕微鏡TM4000PlusⅡは真空度を制御して、導電性のない対象も観察できます。さらに、電子を対象にぶつけてその跳ね返りを見ているので、観察対象の材質の違いを見ることも出来ます。

 

授業SS化学・自然科学部の中で、生徒と電子顕微鏡観察について話し合ったところ、下記の案が出ました。

①銅粉末と銅樹を比較してみよう。

②半紙の表はサラサラ、裏はザラザラその違いは何?

③冬の必需品、高機能な防寒インナー

④トイレットペーパーとティッシュペーパー

生徒の観察結果を見ていきましょう。

 

実験1:銅粉末と銅樹を比較

銅粉末は見た目サラサラです。

しかし、拡大してみると小さな薄片の集まりであることがわかりました。

銅樹は植物の枝のように生えています。

 

拡大してみると、銅の結晶がかくばって成長している様子がわかります。

 

 実験2:半紙の表はサラサラ、裏はザラザラその違いは何?

半紙の表と裏を観察しました。

・半紙の表

・半紙の裏

表面の繊維は最大値が30㎛、最小値が6㎛以上となっています。裏面の繊維は最大値は同じく30㎛ほどですが、最小値が2㎛以下となっています。基本的に繊維の太さは同じですが、裏面は細い繊維が混合しています。これは半紙をすくうときに表面が下になり、重い繊維から重なっていくため、上(裏面)は細い繊維が混合してくると考えられます。

 

実験3:冬の必需品、高機能な防寒インナー

 寒い冬の必需品、高機能な防寒インナーを綿と比較してみました。

・高機能な防寒インナー

 

・綿の服

 

 綿は繊維が乱れており、ほどけています。これと比較して、高機能インナーは繊維が整っており、きれいに織り込まれています。これにより暖かい空気を逃がさず閉じ込めて保温していると考えられます。また観察からはわからないですが、繊維自体が水を吸着して発熱しているため暖かいのです。

 

実験4:ティッシュペーパーとトイレットペーパー

水にとけないティッシュペーパーと水にとけるトイレットペーパーの形状に違いはあるのか?

・ティッシュペーパー(180倍と800倍)

 ・トイレットペーパー(180倍と800倍)

 

 ティッシュペーパーは密度が高く、トイレットペーパーはスカスカでした。

繊維は同じようですが、その密度の違いが水へのなじみやすさの違いにつながるのでしょう。

 あと、観察結果からはわかりませんが、接着剤の影響もあるのでしょう。

 

今回は電子顕微鏡を用いて観察を行いました。肉眼ではよくわからなくても、電子顕微鏡が本来の姿を正確に教えてくます。やはり正確な観察が大切だと改めて気付かせてもらいました。